「プリズンホテル」 浅田次郎2003年に読んだ本の中では、おそらく5本の指にはいるだろう。いや、これから先でもこの本のランクが私の中で急激に下がることは有り得ないと思う。 自分を幼い頃に捨てて出奔した母の面影をどこかに追いながら、小説家となった孝之介。 小説を書く以外は、同居する亡父の後妻と自分のオンナを日々イジメるという、ちょっとねじくれた性格。 描く小説の世界はほとんど任侠の世界ばかりなのに、本当に任侠の世界で暗躍する父方の叔父とはソリがあわずに長年音信不通だったのだが、亡父の法要で久しぶりに顔を会わせると、その任侠の叔父貴はなんと山奥で温泉宿を経営しているというではないか! 思い立って訪れたその温泉宿は本名よりも「プリズンホテル」として名が通っており、駅前のタクシーでさえもそこへはなかなか行ってくれないというシロモノだった。 その「プリズンホテル」に泊まり合わせた客人それぞれの人生や、そのホテルでまっとうに働くスジ者たちの人となりがつぶさに描かれ、笑いあり、涙ありの珠玉の作品。 文庫本4巻を読み終えた時に感じてしまう。 「人間ってのはこうでなきゃ!」 ジャンル別一覧
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